物件選びは「内装がきれいか」だけでは判断できません
居抜き物件を内見すると、「内装がきれいだから、そのまま使えそう」と思うことがあります。しかし、店舗工事では、見えている床・壁・天井よりも、見えにくい設備の状態が工事費に影響することがあります。
たとえば、電気容量が希望する業態に足りない。給水管や排水管の位置が遠い。既存エアコンが古く交換が必要。厨房の排気ダクトを外まで出せない。設備を増やしたくても建物側の制約がある——といったケースです。見た目には条件の良い物件でも、設備条件が業態に合っていなければ、結果として工事費が高くなることがあります。
そのため、店舗物件は「今どうなっているか」だけでなく、「自分の店に必要な設備を入れられるか」まで確認して選ぶことが大切です。
① 電気容量は足りているか
まず確認したいのが電気です。店舗では、照明だけでなく、エアコン、厨房機器、冷蔵庫・冷凍庫、給湯器、美容機器、医療機器、パソコン・レジ、看板など、さまざまな機器で電気を使います。業種によって必要な電気容量は大きく違います。物販店と飲食店では必要になる設備がまったく違いますし、同じ美容室でもドライヤーや美容機器を同時に使用する台数によって条件は変わります。
ここで問題になるのが、「店舗内の分電盤を変えれば解決する」とは限らないことです。建物全体からその区画に供給できる容量に余裕がなければ、簡単には増やせない場合があります。内見時には、「現在どのくらいの電気容量があるか」だけでなく、「必要になった場合、増設できるか」まで確認しておくと安心です。
② 給排水の位置を確認する
次に重要なのが給排水です。特に、飲食店・美容室・クリニック・歯科医院・エステサロンなど、水を使う業種では重要になります。給水については比較的ルートを検討しやすい場合もありますが、注意したいのは排水です。排水は、水が自然に流れるよう勾配を取る必要があります。
つまり、「ここにシンクを置きたい」「この場所にシャンプー台をつくりたい」と思っても、既存の排水位置との関係によっては簡単に移動できないことがあります。排水経路を確保するために床を上げる必要が出たり、希望していたレイアウトを変更したりするケースもあります。店舗のレイアウトを考えるときは、客席や商品棚だけでなく、水まわりの位置から逆算して考えることも大切です。
③ 空調は「付いているか」ではなく「使えるか」を見る
居抜き物件では、既存のエアコンが残っていることがあります。エアコンが付いていれば「空調工事は不要だから得だ」と思うかもしれません。ただし、確認したいのは設置されているかどうかではありません。
- 正常に動くか
- 年式は古すぎないか
- 能力は店舗の広さや用途に合っているか
- 室外機の設置場所は問題ないか
- 将来交換するときの搬入経路はあるか
前のテナントが使えていた設備でも、次の業態にそのまま適しているとは限りません。以前が物販店で、次が飲食店になる場合、店内の熱の発生量や換気条件も変わります。「既存設備あり」という情報だけで判断せず、実際に使える状態か確認しましょう。
④ 飲食店は換気・排気を特に確認する
飲食店の物件選びでは、換気と排気が非常に重要です。厨房では、熱・煙・においなどを外へ排出する必要があります。そこで確認したいのが、ダクトのルートです。厨房から外部までダクトを通せるか。既存のダクトを利用できるか。屋上や外壁まで新しくルートをつくれるか。建物側のルールで制限されていないか。この条件によって、工事内容は大きく変わります。
特にオフィスビルの一室などを飲食店に変更しようとすると、排気ルートの確保が難しいことがあります。「飲食店可」と書かれている物件でも、希望する厨房設備が設置できるとは限りません。飲食店の場合は、契約前に厨房計画とあわせて確認することをおすすめします。
⑤ ガスを使う場合は供給条件も確認する
飲食店などでガス機器を使う場合は、ガスの条件も確認します。以前のテナントが飲食店だった場合でも、「ガスが来ているから問題ない」とは限りません。設置したい厨房機器の内容によって、必要な条件が変わるためです。ガス機器を多く使う計画なら、厨房機器のリストをある程度決めたうえで確認するとスムーズです。
最近は電気式の厨房機器を採用する店舗もありますが、その場合は今度は電気容量の確認が重要になります。設備はひとつずつ考えるのではなく、電気・ガス・空調・換気をまとめて考えることがポイントです。
⑥ 商業施設では「自由に工事できる」とは限りません
ショッピングセンターや駅ビル、商業ビルなどに出店する場合は、さらに注意が必要です。テナント側が希望しても、建物の設備を自由に変更できるとは限りません。施設によって、使用できる電気容量、給排水の接続位置、空調方式、ダクトルート、室外機の設置場所、施工できる工事会社などが決められている場合があります。
また、建物側の設備に関わる工事はB工事になることがあります。テナント側の内装見積だけを見ていると、あとから別途工事費が出てくることがあります。商業施設への出店を検討している方は、B工事・C工事の記事もあわせて確認してみてください。
物件契約前に施工会社に見てもらうのがおすすめです
ここまで読むと、「内見だけで全部確認するのは難しそう」と思われるかもしれません。実際、初めて店舗を出す方が設備条件をすべて判断するのは簡単ではありません。そこでおすすめしたいのが、物件を契約する前に施工会社へ相談することです。
候補物件の図面や設備資料があれば、希望するレイアウトができそうか、設備条件に大きな問題がないか、追加工事が発生しそうな部分はどこか、おおよその工事費はいくらになりそうか——といったことを、ある程度事前に確認できます。すでに物件の内見日が決まっているなら、施工会社に同行してもらう方法もあります。店舗内装工事は、契約してから考えるより、契約する前から考えたほうが選択肢が多くなります。
家賃が安い物件が、最終的に安いとは限りません
物件選びでは、どうしても毎月の賃料が判断材料になります。もちろん家賃は重要です。ただ、「家賃は少し高いが設備条件が良いA物件」と「家賃は安いが大規模な設備工事が必要なB物件」というケースもあります。B物件のほうが一見安く見えても、内装工事の初期費用まで含めると逆転する可能性があります。
そのため出店予算を考えるときは、物件取得費+内装工事費+設備工事費まで含めて比較することが大切です。内装工事費の考え方は店舗内装工事の坪単価の記事でも詳しく解説しています。
まとめ
- 電気容量は希望する業態に足りているか・増設できるか
- 給排水の位置は希望するレイアウトに合っているか
- 既存空調を本当に利用できるか
- 換気・排気ダクトのルートを確保できるか
- ガスを使用する場合は供給条件に問題がないか
- 商業施設では設備工事の区分やルールを確認する
店舗物件は、立地や家賃だけでは判断できません。設備条件まで含めて確認することで、契約後の想定外の追加工事を減らし、出店予算も立てやすくなります。
カネケンでは、クリニック・買取店・サロン・物販店・飲食チェーン・オフィスなど、さまざまな店舗の内装工事に対応しています。物件資料や図面があれば、契約前の段階でも工事内容や概算についてご相談いただけます。「この物件で希望する店舗がつくれるか」「契約する前に工事費を知りたい」といった段階でも、お気軽にご相談ください。概算は即日を目安にご回答します。