まず見るべきは「金額」より「工事範囲」です
見積書を開くと、どうしても最初に右下の合計金額を見てしまいます。もちろん予算は重要です。ただ、最初に確認していただきたいのは「何が含まれている見積なのか」です。
たとえば、同じ20坪の店舗で、A社800万円・B社650万円という見積が出たとします。数字だけならB社を選びたくなりますが、A社には空調工事・サイン工事・既存設備の撤去処分まで含まれていて、B社には入っていない、ということがあります。この場合、150万円の差をそのまま「会社による価格差」と考えることはできません。
見積を比較するときは、まず各社の工事範囲をそろえること。ここがスタートです。
店舗内装工事の見積に出てくる主な項目
店舗の業種や物件によって変わりますが、見積書にはおおむね次のような項目が並びます。
| 項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 仮設・養生工事 | 共用部や床などの保護、仮設物 |
| 解体・撤去工事 | 既存壁・床・天井・設備などの撤去 |
| 軽鉄・ボード工事 | 壁や天井の下地づくり |
| 内装仕上げ工事 | クロス、塗装、床材など |
| 木工・造作工事 | カウンター、棚、建具など |
| 電気工事 | 照明、コンセント、分電盤、配線 |
| 給排水工事 | 水道、排水、給湯など |
| 空調・換気工事 | エアコン、換気扇、ダクトなど |
| サイン工事 | 看板、店名サイン、シートなど |
| 諸経費・現場管理費 | 現場管理、工程調整、安全管理など |
飲食なら厨房設備、美容室ならシャンプー台まわりの給排水、クリニックなら医療機器に合わせた電源など、業種特有の工事も追加されます。そのため、「店舗内装は坪○万円」という数字だけで最終的な予算を判断するのは難しいものです。坪単価の考え方は店舗内装工事の坪単価の記事で詳しく整理しています。
見積書で確認したい7つのポイント
① 「一式」が多すぎないか
見積書でよく見かけるのが「○○工事 一式」という表記です。一式という書き方自体が悪いわけではありません。細かく数量を出しにくい工事では、一式で計上することもあります。
ただし「内装工事 一式 300万円」だけでは、何が入っているのか判断できません。床・壁・天井・造作・塗装まで含まれているのか。材料のグレードは何なのか。金額が大きい項目ほど、内容を確認してください。
② 数量と単価が分かるか
比較しやすい見積は、「床工事 ○㎡ × ○円」「クロス工事 ○㎡ × ○円」「照明器具 ○台 × ○円」というように、数量と単価がある程度分かれています。
数量が見えると、あとでプランを変更したときにも「床を10㎡減らしたらどのくらい下がるか」といった検討がしやすくなります。予算調整をするときにも重要な部分です。
③ 電気・空調・給排水が入っているか
店舗工事で金額が大きく動きやすいのが設備工事です。特に確認したいのは次の点です。
- 電気容量は足りているか
- 分電盤の変更は必要か
- 給排水をどこから持ってくるか
- 既存空調を使用できるか
- 新しくダクトを設置する必要があるか
見た目のデザインが同じでも、設備条件が違えば工事費は大きく変わります。だからこそ、物件契約前に施工会社に現地を見てもらうことをおすすめしています。
④ 解体・撤去・処分費が入っているか
居抜き物件では特に確認したい項目です。既存の壁やカウンターを撤去する費用だけでなく、解体した材料を搬出して処分する費用も発生します。「既存設備をそのまま使う予定だったが、調査すると使えなかった」という場合は、追加の撤去費用が出ることもあります。居抜きとスケルトンの違いについては居抜きとスケルトンの記事で解説しています。
⑤ サイン・什器・家具はどこまで含まれているか
ここも見積差が出やすいところです。店舗の看板、レジカウンター、商品棚、バックヤードの棚、ミラーなどを内装会社がつくるのか、別会社から購入するのか。見積書に含まれていない場合、内装工事とは別に予算を確保する必要があります。
特にオープン直前になって「棚がない」「看板代を見ていなかった」となると、予算だけでなく工程にも影響します。
⑥ B工事が別になっていないか
百貨店、ショッピングセンター、駅ビル、オフィスビルなどへの出店では、B工事にも注意してください。B工事は一般的に、テナント側が費用を負担し、施設側の指定業者が施工する工事です。
つまり、内装会社から出てきたC工事の見積が800万円だからといって、「出店工事は800万円で終わる」とは限りません。別途B工事が200万円あれば、工事関連の総額は1,000万円になります。施設への出店では、C工事の見積+B工事の見積を合わせて予算を見ることが大切です。詳しくはB工事・C工事の記事でも解説しています。
⑦ 追加工事が起こりそうな条件を聞く
見積をもらったら、「この金額から追加になる可能性があるのは、どんな場合ですか?」と聞いてみてください。これはかなり重要な質問です。
工事を始めて壁や天井を開けてみないと分からない部分はあります。しかし、経験のある施工会社であれば、どんな条件で追加費用が発生しやすいかは事前にある程度説明できます。見積金額そのものだけでなく、こうした説明をきちんとしてくれるかも、施工会社を選ぶ判断材料になります。
相見積もりは「同じ条件」で取ることが大切です
2社以上から見積を取ること自体は問題ありません。ただし、比較するなら各社に同じ資料を渡してください。図面、仕上げの仕様、設備条件、サインの範囲、希望する工期。条件が違えば、当然見積金額も違います。
「A社は安い、B社は高い」と思って詳しく確認すると、A社には入っていない工事項目がいくつもあった、ということもあります。理想は、金額だけを横に並べるのではなく、工事項目ごとに「入っている・入っていない」を確認することです。分からない項目があれば、遠慮せず施工会社に聞いてください。
良い見積書とは、項目数が多い見積書ではありません。最終的に「この金額で、どこまでやってもらえるのか」が分かる見積書です。
安い見積が悪いわけではありません
ここは誤解のないようにお伝えしておきます。安い施工会社が悪いわけではありません。既存設備をうまく利用できる、施工方法を工夫している、自社で対応できる工種が多いなど、合理的な理由で価格を抑えられる会社もあります。反対に、高いから安心とも限りません。
見るべきなのは金額の大小ではなく、「なぜこの金額なのか説明できるか」です。見積の根拠が分かり、工事範囲が明確で、追加になりそうな部分についても事前に説明がある。こうした見積のほうが、出店予算を組むうえでは安心です。
まとめ
- まず工事範囲が同じか確認する
- 「一式」の内容を確認する
- 電気・空調・給排水などの設備工事を見る
- 解体、処分、サイン、什器が含まれているか確認する
- 商業施設ではB工事を別に確認する
- 追加工事が発生する条件を事前に聞く
- 相見積もりは同じ図面・同じ仕様で比較する
店舗工事の見積は、専門用語も多く、初めて出店される方には分かりにくいものです。ただ、最初からすべての項目を理解する必要はありません。大切なのは、「この見積には何が入っていて、何が入っていないのか」を明確にすることです。
カネケンでは、クリニック・買取店・サロン・物販店・飲食チェーン・オフィスなど、さまざまな店舗の内装工事に対応しています。物件資料や図面があれば、出店計画の早い段階から概算のご相談も可能です。「この見積の考え方で予算は足りそうか」「物件を契約する前に工事費を知りたい」といった段階でも、お気軽にご相談ください。概算は即日を目安にご回答します。