まず「いくら下げたいのか」を明確にする
見積が予算を超えたとき、「とにかく安くしてください」と施工会社へ伝えるだけでは、減額調整は進めにくいものです。まず確認したいのは、現在の見積金額と、最終的に収めたい金額の差です。
たとえば、見積金額800万円・希望予算750万円なら、50万円の調整です。一方、見積金額800万円・希望予算550万円なら、250万円の調整になります。50万円なら仕上げや什器の仕様変更で対応できる可能性がありますが、250万円となれば、レイアウトや設備計画そのものを見直す必要が出てくるかもしれません。最初に「あと○万円下げたい」と決めることで、施工会社も具体的な提案をしやすくなります。見積書のどこを見て比較するかは、店舗内装工事の見積書の見方の記事でも解説しています。
① まず造作家具・什器を見直す
店舗内装で比較的見直しやすいのが、造作家具や什器です。受付カウンター。商品棚。収納。ディスプレイ什器。ベンチ。バックヤードの棚。店舗に合わせて製作する造作家具は、寸法やデザインを自由に決められる一方、既製品より費用がかかる場合があります。
そこで、「お客様からよく見える受付カウンターは造作にする」「バックヤードの棚は既製品にする」というように使い分けます。すべてを既製品にする必要はありません。店舗の見せ場に予算を集中し、見えにくい場所は合理的に抑える。これだけでも、デザインを大きく変えずに調整できる場合があります。
② 仕上げ材は「全面」ではなく使う場所を絞る
次に検討しやすいのが、床・壁・天井などの仕上げです。たとえば、デザイン性の高いタイルや石材を店舗全体に使う計画になっている場合。それをすべて安い材料へ変更すると、店舗の印象まで変わってしまいます。
そこで、入口正面の壁だけタイルを使う。お客様から見える部分はデザイン性のある材料にする。バックヤードは一般的なクロスや床材にする。というように、材料を使う範囲を整理します。高い材料を「使うか、使わないか」の二択ではなく、どこに使うかを見直すことがポイントです。店舗内装では、一面だけ素材を変えるだけでも十分アクセントになることがあります。
③ 照明器具の数量と種類を見直す
照明も減額調整の候補になります。ただし、「照明を減らせば安くなる」という単純な考え方には注意が必要です。必要な明るさまで落としてしまうと、商品の見え方やスタッフの作業性に影響します。
そこで確認したいのが、照明器具の数量と種類です。デザイン照明をすべて同じグレードでそろえる必要があるか。装飾用のペンダントライトを少し減らせないか。バックヤードまで店舗と同じ照明器具を使う必要があるか。照明計画の役割を分けることで、雰囲気を残しながら減額できる場合があります。また、照明器具そのものだけでなく、配線やスイッチの数によっても工事内容は変わります。
④ レイアウトを複雑にしすぎていないか確認する
見積金額を大きく下げたい場合は、仕上げ材だけではなくレイアウトを見直すこともあります。たとえば、壁が多い。個室が多い。曲線の壁や特殊な形状が多い。建具の数が多い。床や天井に細かい切り替えが多い。こうしたレイアウトは、材料だけでなく施工の手間も増えます。壁を1枚減らすだけでも、下地・ボード・クロス・巾木・電気配線など、関連する工事が減ることがあります。
もちろん、必要な個室や間仕切りを無理に削るべきではありません。店舗レイアウトの記事でも触れているように、動線や営業のしやすさを優先したうえで、必要以上に複雑になっている部分がないかを確認します。
⑤ 既存設備・既存内装を使えるか再確認する
居抜き物件や既存店舗の改装では、残せるものをもう一度確認することも減額につながります。たとえば、既存エアコン。照明。建具。カウンター。天井。床。給排水設備。すべて新品にする予定だったものの中に、状態が良く、そのまま使えるものがあるかもしれません。既存設備を活かせれば、新設費だけでなく撤去・処分費も抑えられる場合があります。
ただし、「残っているから使う」ではなく、状態を確認して、今後も使えるものだけ残すことが大切です。古い空調を残した結果、オープン直後に故障して交換となれば、かえって費用が増える可能性があります。居抜き物件では、残すものと撤去するものを施工会社と一緒に整理してください(居抜きとスケルトンの違いの記事も参考にどうぞ)。
⑥ 電気・空調・給排水は安易に削らない
減額調整をするときに、慎重に判断したいのが設備工事です。電気。空調。換気。給排水。防災設備。こうした工事は金額が大きく見えるため、「ここを削れば大きく安くなるのでは?」と思うかもしれません。しかし、営業に必要な設備まで削ってしまうと、完成後に困ることになります。
たとえば、コンセントを減らしすぎて延長コードだらけになる。空調能力が足りず、夏場に店内が暑くなる。収納を優先して点検口を使いにくくする。必要な換気量を確保できない。こうした減額はおすすめできません。設備については「削る」というより、本当に必要な能力を確認して、過剰な仕様になっていないかを見るという考え方が適しています。店舗物件の設備条件によって工事費は大きく変わるため、物件選びの段階から確認しておくことも重要です。
⑦ オープン後に追加できるものを分ける
すべてをオープン初日までに完成させる必要があるか、一度考えてみる方法もあります。たとえば、装飾。追加のディスプレイ什器。バックヤードの収納。一部の家具。将来的に増設するサイン。こうしたものは、営業開始後に追加できる場合があります。
もちろん、あとから工事すると割高になるものもあるため、何でも後回しにすればよいわけではありません。壁の中の配線や配管などは、内装工事中に施工したほうが効率的です。一方で、置くだけの家具や装飾なら、オープン時の予算から外せる可能性があります。「今やらなければならない工事」と「あとでもできるもの」を分ける。これも予算調整では有効です。
減額しないほうがよい部分もあります
店舗内装の減額調整では、削りやすいところだけでなく、削らないほうがよいところを決めることも大切です。特に、安全に関わる工事。法令や施設基準に関わる工事。営業に必要な設備。あとから変更すると大きな工事になる部分。こうしたところは慎重に判断してください。
たとえば、壁の中の配線や給排水をオープン後に変更する場合、完成した壁や床を再び壊す必要が出ることがあります。一方、家具や装飾は比較的あとから変更しやすいものです。減額するときは、単純に見積金額の大きい項目から削るのではなく、あとから変更しにくいものを優先して残すと考えると判断しやすくなります。
一番減額しやすいのは「着工前」です
店舗内装工事では、減額調整を行うタイミングも重要です。見積・設計段階なら、材料を変える。造作を既製品へ変更する。壁の位置を変える。設備計画を調整する。といった選択肢があります。しかし、すでに材料を発注し、工事が始まってから変更すると、キャンセル費用ややり直し工事が発生することがあります。
店舗内装工事の流れの記事でもお伝えしているように、概算を早く取り、設計と一緒に調整することがコストを抑えるポイントです。そのため、予算に上限がある場合は、最初の打ち合わせで施工会社へ伝えておくことをおすすめします。「希望するデザインを全部入れてから削る」より、最初から予算の中で優先順位を決めるほうが、結果として計画をまとめやすくなります。
まとめ
店舗内装工事の見積が予算を超えたときは、すぐにすべての仕様を下げる必要はありません。まず、
- いくら減額する必要があるか決める
- 造作家具・什器を見直す
- 仕上げ材を使う場所を絞る
- 照明器具の数量・種類を調整する
- 複雑なレイアウトを整理する
- 既存設備・既存内装を活かせないか確認する
- オープン後でも追加できるものを分ける
という順番で考えてみてください。そして、電気・空調・給排水など営業に必要な設備は、単純な減額対象にせず、必要な性能を確認したうえで判断することが重要です。店舗内装のコスト調整は、「安くすること」が目的ではありません。限られた予算を、店舗にとって重要な部分へ使うことが目的です。
カネケンでは、図面や物件資料をもとに、出店計画の早い段階から概算のご相談に対応しています。「見積が予算を超えているので減額案を考えたい」「この予算ならどこまで工事できるか知りたい」といった段階でも、お気軽にご相談ください。概算のご相談は無料・即日目安でご回答します。