
① まず「なぜ床を上げるのか」を整理する
床上げ工事にはいくつかの目的があります。
代表的なのは、床下に配管や配線を通すためのスペースをつくることです。
たとえば美容室でシャンプー台を既存の排水位置から離れた場所へ設置したい場合、その間を排水管でつなぐ必要があります。
飲食店でも、シンクや厨房機器の位置によっては床下へ給排水管を通します。
そのほか、
- 床下へ電気や通信配線を通したい
- 既存床の高さが場所によって違う
- 一部に座敷やステージをつくりたい
- 設備配管を床下へ納めたい
といった理由で床を上げる場合があります。
重要なのは、「床上げすること」自体を目的にしないことです。
何を床下へ通すのか、どの範囲を上げる必要があるのかを整理すると、店舗全面を上げる必要がないケースもあります。
② 排水管を通す場合は高さだけでなくルートを見る
床上げ工事と特に関係が深いのが排水です。
給水管は比較的ルートを調整しやすい場合がありますが、排水は水が流れるように配管する必要があるため、排水先までの距離や位置が床の高さに影響します。
たとえば排水を接続する場所から設備までの距離が長くなれば、必要な床下スペースも変わることがあります。
そのため、
「床を10cm上げれば大丈夫」
「この高さならシャンプー台を置ける」
と床の高さだけを先に決めるのではなく、排水をどこへ接続し、どのルートで持っていくかを先に確認することが大切です。
水まわりの位置を少し変更するだけで、床上げ範囲を小さくできる場合もあります。
店舗レイアウトを考えるときは、使いやすさと同時に、既存の給排水位置との距離も確認しておくと工事をまとめやすくなります。
③ 床を上げたあとの「完成高さ」を確認する
床上げ工事では、床下に必要なスペースだけを考えてしまいがちですが、完成した床がどの高さになるかも重要です。
たとえば店舗入口より店内の床が高くなると、入口に段差ができます。
共用通路との境目、既存の扉、バックヤード、トイレなど、床を上げない部分との間にも高さの差が生まれることがあります。
そこで確認したいのが、
- 店舗入口との高さ
- 床上げしない場所との取り合い
- 扉の下部との干渉
- 既存建具がそのまま使えるか
- 床仕上げ材を含めた最終的な高さ
です。
下地だけの高さではなく、最後に貼るタイルやシートなどの厚みまで含めた「仕上がりの床高さ」で確認します。
数センチの違いでも、入口や建具との納まりには影響するため、着工前に断面で確認しておくことが大切です。
④ 床を上げると天井は相対的に低くなる
床を高くすれば、その分だけ床から天井までの距離は短くなります。
天井が高い物件ではあまり気にならないこともありますが、もともとの天井高さが低い店舗では、床上げによって圧迫感が出る場合があります。
特に店舗全面を床上げする場合は、完成後にどの程度の天井高さになるのかを確認しておきたいところです。
床を上げたことで、お客様から照明までの距離が近くなったり、既存の設備が低く感じられたりすることもあります。
床上げは床だけの工事に見えますが、完成した店舗の空間全体の高さを変える工事でもあります。
平面図だけでは分かりにくいため、必要に応じて断面図や現地の実寸で確認するとイメージしやすくなります。
⑤ 入口や店内の段差をできるだけ早く確認する
床上げによって特に注意したいのが段差です。
店舗入口に大きな段差ができると、お客様が出入りしにくくなります。
店内でも、売場からトイレ、個室、バックヤードへ移動するときに段差があると、つまずきやすくなるだけでなく、台車などを使用する場合にも不便です。
床を上げる必要がある場合でも、
- 店舗全体を同じ高さにする
- 必要な部分だけ床を上げる
- 高さの差を別の方法で納める
など、物件の条件によって検討方法は変わります。
また、店舗の用途や建物によっては、バリアフリーに関する条件の確認が必要になる場合もあります。
床上げ工事を計画するときは、「配管が入れば完成」ではなく、お客様やスタッフが実際に歩くところまで確認することが重要です。
⑥ 重い設備や什器を置く場所は事前に伝える
床上げした場所には、商品棚、レジカウンター、厨房機器、美容機器など、さまざまなものを設置します。
そのため、床のつくり方を考えるときは、完成後に何を置くのかも重要です。
特に重量のある設備や什器を設置する場合は、床下地や固定方法を含めて確認する必要があります。
また、床へ機器を固定する予定がある場合は、床下に配管や配線が通っていないかも確認しておきたいところです。
完成後にアンカーなどで固定しようとして、その位置の床下に設備配管があると、施工方法を変更しなければならないことがあります。
大型什器や設備の位置が決まっている場合は、床工事を進める前に施工会社へ共有しておくと安心です。
⑦ 床下設備のメンテナンスも考えておく
床下へ配管や設備を隠せば、店舗内はすっきり見えます。
一方で、床下に納めた設備は完成後に簡単に確認できなくなります。
たとえば排水管に不具合が起きた場合、場所によっては床材や下地を一部開けて確認しなければならないことがあります。
そのため、設備の接続部分や将来点検する可能性がある場所については、どのようにメンテナンスするのかも考えておきます。
点検できる場所を設ける場合もあれば、設備位置を記録した竣工図や写真を残しておく方法もあります。
店舗が完成すると床下は見えなくなるため、施工中の配管状況を写真に残しておくと、将来の改装や修理時にも役立ちます。
居抜き物件では既存の床上げをそのまま使えるか確認する
居抜き物件では、前の店舗が床上げした状態で残っていることがあります。
既存床をそのまま利用できれば、新たに床をつくる工事を減らせる可能性があります。
ただし、床が残っているからといって、そのまま新しい店舗でも使えるとは限りません。
前テナントと新しい店舗では、
- 水まわりの位置
- 配管ルート
- 設備の重量
- 必要な床仕上げ
- レイアウト
が異なることがあります。
また、床下の状態を外から確認できない場合もあります。
既存床を活用するときは、見た目だけで判断せず、図面や点検できる範囲から床下の状態を確認し、新しい設備計画に使えるかを検討します。
床上げ範囲はレイアウトと給排水を一緒に考える
床上げ工事の費用や工事量は、床をどのくらい高くするかだけではなく、「どの範囲を上げるか」によっても変わります。
水を使う設備が店舗内に点在していると、それぞれへ配管するために床上げ範囲が広くなることがあります。
反対に、シンク、手洗い、シャンプー台などを既存の給排水位置に近い場所へまとめられれば、床下配管を整理しやすくなる場合があります。
そのため、店舗のレイアウトを決めるときは、使いやすい配置だけでなく、設備をどうつなぐかも一緒に考えることがポイントです。
特にスケルトン物件では、何もない状態から自由に配置できるように見えますが、既存配管の位置によって効率のよいレイアウトは変わります。
物件契約前やレイアウト検討の早い段階で、床と給排水の条件を確認しておくと、工事が始まってからの変更を減らしやすくなります。
まとめ
店舗の床上げ工事は、単に床を高くするための工事ではありません。
- 何のために床を上げるのか整理する
- 排水先と配管ルートを先に確認する
- 仕上げ材を含めた完成床の高さを見る
- 床を上げたあとの天井高さも確認する
- 入口や店内にできる段差を確認する
- 重量のある設備や什器の位置を共有する
- 床下設備のメンテナンス方法も考えておく
特に給排水設備を使用する店舗では、床上げの高さや範囲がレイアウトや工事費に影響することがあります。
カネケンでは、店舗のレイアウトだけでなく、給排水や床下配管、床上げ、床仕上げまで含めた内装工事に対応しています。
「シャンプー台をこの位置に置けるか確認したい」「厨房をつくるためにどのくらい床を上げる必要があるか分からない」「居抜き物件の既存床をそのまま使えるか見てほしい」といった段階でも、物件の設備条件を確認しながら工事内容を整理できます。
店舗の新規出店・改装をご検討の際は、お気軽にご相談ください。