
① まず既存のトイレと給排水位置を確認する
物件を内見したときに最初に確認したいのが、現在トイレがどこにあり、給排水設備がどこにあるかです。居抜き物件や事務所仕様の物件では、すでにトイレが設置されていることがあります。その位置をそのまま利用できれば、大きな設備工事をせずに済む可能性があります。
一方、
- 売場を広くしたいのでトイレを奥へ移したい
- スタッフ用とお客様用を分けたい
- トイレをもう1か所増やしたい
となると、新しい位置まで給水・排水配管を延ばす必要があります。店舗レイアウトを決めるときは、トイレの位置を自由に動かせる前提で考えず、まず既存設備を確認してください。物件を見るときの確認項目は「店舗物件の設備チェック」、給排水そのものの工事は「店舗の給排水工事」で整理しています。
② 排水があるため、どこへでも移設できるとは限らない
トイレの移設で特に重要なのが排水です。給水管は比較的ルートを検討しやすい場合がありますが、排水は水が流れるように勾配を確保する必要があります。既存の排水管から離れた場所へトイレを移動すると、そのための配管スペースが必要になります。場合によっては、
- 床を一部上げる
- 配管ルートを変更する
- 既存床を解体する
といった工事が必要になります。つまり、「図面上ではここにトイレが入る」ことと、「設備的に無理なくここへトイレをつくれる」ことは別です。トイレの移設・増設を考えている場合は、レイアウトを確定する前に施工会社へ相談することをおすすめします。
③ お客様からの「見え方」も考えて位置を決める
お客様用トイレでは、使いやすさだけでなく入口からの見え方にも配慮したいところです。たとえば飲食店で、
- 客席からトイレの扉が真正面に見える
- 入口を開けると内部が見えやすい
- トイレ前をスタッフが頻繁に行き来する
というレイアウトでは、落ち着かないと感じることがあります。一方で、店舗の一番奥に隠しすぎると、「トイレがどこにあるか分からない」という問題も出ます。必要に応じて前室を設けたり、壁の向きや扉の位置を調整したりする方法もあります。
店舗レイアウトでは売場・客席・レジだけを見るのではなく、お客様がトイレまでどのように移動するのかも確認してください。動線の考え方は「店舗レイアウトの考え方」で整理しています。
④ 手洗器・電源・備品までまとめて考える
トイレ工事では、便器だけを決めて終わりではありません。
- 手洗器
- 鏡
- 照明
- 温水洗浄便座
- 換気設備
- ペーパーホルダー
- 荷物置き
- 清掃用品の収納
なども必要になります。特に温水洗浄便座には電源が必要です。内装工事が完成してから、「ここにコンセントが必要だった」となれば追加工事になることがあります。
また、店舗によっては、お客様がバッグや上着を持ったまま利用することもあります。フックや小さな棚があるだけでも使いやすさは変わります。図面では便器と手洗器だけに目が向きやすいため、実際に使用するときに必要になるものまで先に整理することがポイントです。あとから出やすい費用は「追加費用が出やすい7つの場面」でも整理しています。
⑤ 換気とにおい対策を忘れない
トイレでは換気設備も重要です。既存トイレをそのまま利用する場合でも、換気扇が付いているか、現在も使用できる状態かを確認します。新しくトイレをつくる場合は、
- どこから排気するのか
- ダクトを通せるのか
- 建物側の換気設備へ接続できるのか
といった確認が必要になります。特にビルや商業施設では、テナント側が自由な場所へ排気できないことがあります。
トイレ自体をきれいに仕上げても、換気が十分でなければ店舗全体の快適性に影響します。空調と同じように、換気設備も内装が完成してから考えるのではなく、設計段階から確認してください。詳しくは「店舗の換気工事」「店舗の空調工事」をご覧ください。
⑥ 床・壁は清掃しやすさも考えて選ぶ
店舗のトイレは、毎日清掃する場所です。そのため床や壁の仕上げは、デザインだけではなくメンテナンス性も考えて選びます。たとえば床では、
- 水や汚れに配慮した材料
- 掃除しやすい材料
- 汚れが目立ちにくい色柄
などを検討します。壁についても、手が触れやすい場所や水はねが想定される場所では、清掃方法まで考えておくと安心です。
お客様用トイレは面積が小さいため、「少しくらい高い材料を使っても店舗全体への影響は大きくない」という場合もあります。そのため、売場と同じ仕上げをそのまま使うのではなく、トイレという用途に合わせて材料を選ぶ方法もあります。既存の「店舗内装の床材の選び方」「店舗内装の壁材の選び方」と合わせて考えると、仕様を整理しやすくなります。
⑦ バリアフリーや建物側の基準を早めに確認する
店舗の用途・規模・建物条件によっては、トイレについてバリアフリー関係の基準を確認する必要があります。国土交通省では、建築物のトイレに関するバリアフリー基準を改正し、2025年6月1日から施行しています。対象となる建築物や必要な仕様は条件によって異なり、自治体独自の条例が関係する場合もあります。
そのため、
- 車椅子で利用できる広さが必要か
- 入口や通路の幅は問題ないか
- 扉の開き方は適切か
- 手すりなどの設備が必要か
といった条件は、計画初期に確認してください。完成直前になって基準に合わないことが分かると、壁や扉の位置から変更しなければならない可能性があります。「トイレをどこへ置くか」を決める段階で必要な条件を確認することが重要です。
共用トイレがある物件でも確認しておきたいこと
商業施設やオフィスビルでは、テナント区画の外に共用トイレがある場合があります。この場合、「区画内にはトイレをつくらなくてもよいのでは?」と考えることがあります。実際に区画内へトイレを設置するかどうかは、店舗の業種、施設側のルール、運営方法などによって変わります。
たとえばスタッフが営業時間中に頻繁に利用する店舗では、共用トイレまでの距離も確認しておきたいところです。また、現在は共用トイレを利用できても、テナントの用途によって別の設備条件を求められる場合もあります。物件契約前に、「この店舗用途の場合、トイレは共用設備の利用で問題ないか」を管理会社や施設側へ確認しておくと安心です。施設側が行う工事との区分は「B工事・C工事の違い」で整理しています。
トイレの移設・増設は見積段階で伝える
店舗内装の見積を依頼するとき、「とりあえず今のトイレを使う予定」として見積を出したあとで、「やっぱりトイレを移動したい」となると、金額が大きく変わることがあります。トイレの移設では、
- 解体
- 給排水
- 電気
- 換気
- 間仕切り
- 床・壁・天井
- 器具
など複数の工事が関係するためです。まだ位置が決まっていない場合でも、「トイレを移設する可能性がある」「もう1か所増設を検討している」と施工会社へ伝えてください。不確定な部分を先に共有することで、追加費用になりそうな項目を把握しやすくなります。見積書の読み方は「店舗内装の見積の見方」、依頼のときにそろえる資料は「見積依頼に必要な資料」をご覧ください。
まとめ
店舗のトイレ工事では、便器や内装デザインだけでなく、給排水・換気・電気・レイアウトまでまとめて考えることが大切です。確認したいポイントは、
- 既存のトイレと給排水位置を確認する
- 排水条件を見ながら移設・増設を検討する
- 客席や売場からの見え方を考える
- 手洗器・電源・備品までまとめて計画する
- 換気とにおい対策を確認する
- 清掃しやすい床・壁材を選ぶ
- バリアフリーや建物側の基準を早めに確認する
という7つです。トイレは店舗全体の中では小さなスペースですが、設備工事が集まっているため、あとから変更しようとすると意外に大きな工事になることがあります。だからこそ、「空いている場所にトイレをつくる」のではなく、給排水条件と店舗レイアウトを合わせて早い段階から計画することをおすすめします。
カネケンでは、店舗の新装工事から改装、既存トイレの移設・増設、設備の更新まで対応しています。「この物件でトイレを移せるか知りたい」「共用トイレだけで足りるか相談したい」「バリアフリーの条件を確認しておきたい」といった計画段階でも、お気軽にご相談ください。工事全体の進み方は「店舗内装工事の流れ」でご確認いただけます。