店舗では毎日多くの人が歩きます。商品や什器を移動することもあれば、美容室なら髪の毛や薬剤、飲食店なら水や油が床に落ちることもあります。見た目が気に入っていても、店舗の使い方に合わない床材を選ぶと、「汚れが目立つ」「掃除が大変」「すぐ傷がついた」といった問題が出てくることがあります。この記事では、店舗内装の床材を選ぶときに確認しておきたい7つのポイントを、施工会社の視点で整理します。

店舗の床材は「何を貼るか」だけではありません
店舗でよく使われる床材には、さまざまな種類があります。塩ビタイル、長尺シート、タイルカーペット、磁器タイル、フローリング系の材料などです。それぞれ見た目だけでなく、施工方法やメンテナンス性も違います。そのため、「この木目が好きだからこれにする」という決め方より、この場所を誰が、どのように使うのかから考えるほうが失敗しにくくなります。
同じ店舗の中でも、売場とバックヤードで床材を変えて問題ありません。場所ごとに必要な性能を考えて選ぶことがポイントです。
① まず「どのくらい人が歩くか」を考える
最初に確認したいのが、人の通行量です。店舗の入口やレジ前など、一日に何度も人が通る場所と、ほとんど人が入らない収納スペースでは、床にかかる負担が違います。特に、来店数の多い物販店や商業施設では、住宅と同じ感覚で床材を選ばないほうが安心です。
また、お客様だけではありません。スタッフが台車を使う。商品を搬入する。椅子を何度も動かす。こうした使い方でも床は傷みます。カタログを見るときは色柄だけでなく、店舗や土足での使用を想定した商品かどうかも確認してください。デザインが似ている床材でも、使用を想定している場所が違う場合があります。
② 掃除のしやすさを営業後まで想像する
店舗は、完成した直後より営業を始めてからのほうが長く使います。そのため床材選びでは、毎日の清掃も重要です。たとえば、美容室では髪の毛が床に落ちます。飲食店では水や油汚れが発生します。物販店では入口から砂やほこりが入ります。クリニックでは清潔感を保ちやすいことも重要になります。
床材の凹凸が大きいと、デザインとしては良くても汚れが入り込みやすいことがあります。反対に、汚れが目立たない色を選びすぎると、実際には汚れていることに気付きにくい場合もあります。「汚れない床材」を探すというより、どんな汚れが出て、どのように掃除するかを考えて選ぶことをおすすめします。
③ 水を使う場所は、売場と同じ床材にしないことも考える
店舗の中には、水を使う場所があります。美容室のシャンプースペース。飲食店の厨房。給湯室。トイレ。こうした場所では、客席や売場と同じ基準で床材を決める必要はありません。水がかかりやすい場所では、清掃性や滑りにくさなどを考えて材料を選びます。
また、厨房などでは床の仕上げだけでなく、防水や排水まで関係することがあります。見た目を統一することも大切ですが、設備を使う場所については、まず必要な機能を優先してください。一つの店舗だからといって、床をすべて同じ材料にする必要はありません。
④ 色は小さなサンプルだけで決めない
床材を選ぶときには、メーカーのサンプル帳を見ることが多いと思います。ここで注意したいのが、サンプルの大きさです。10cm、20cmほどの小さな見本ではちょうどよく見えた色が、店舗全体へ施工すると、想像より明るく見えたり、暗く見えたりすることがあります。
木目や石目など柄のある床材も同じです。小さなサンプルでは柄の一部分しか見えていないため、広い面積に貼ったときの印象が分かりにくいことがあります。可能であれば、大きめのサンプルや施工写真も確認してください。さらに、床だけで判断せず、壁。什器。照明。建具。との組み合わせも一緒に見ます。店舗の内装は、それぞれの材料単体ではなく、すべてが組み合わさった状態で見えるためです。
⑤ 床の色と「汚れ・傷の目立ち方」を考える
明るい床は空間を明るく見せやすく、濃い色の床は落ち着いた印象をつくりやすくなります。ただ、色によって汚れや傷の見え方も変わります。たとえば、真っ白に近い床では髪の毛や黒い汚れが目立ちやすくなります。一方、濃い色の床では、ほこりや細かな白い汚れが目立つことがあります。「暗い色なら汚れが目立たない」とは限りません。
美容室なら髪の毛。物販店なら靴から入る砂やほこり。飲食店なら食べこぼし。業種によって目立ちやすい汚れは違います。床材を選ぶときは、完成写真だけではなく、半年後に営業している状態を想像してみてください。
⑥ 既存床の上から貼れるかを確認する
居抜き物件や店舗改装では、既存の床をすべて撤去せず、その上から新しい床材を施工できる場合があります。既存床を利用できれば、撤去や処分にかかる工事を減らせる可能性があります。ただし、必ず上から貼れるわけではありません。
既存床が浮いている。凹凸が大きい。下地が傷んでいる。新しい床を重ねることで扉が開かなくなる。床の高さが変わり、別の部屋との間に段差ができる。こうした場合は、下地の補修や既存床の撤去が必要になります。そのため、見積段階では「床○㎡」という数量だけでなく、既存床をどう処理する見積なのかも確認してください。居抜きとスケルトンでは、この下地条件によって工事費も変わります。
⑦ 将来の張り替えまで考える
店舗は、完成したら何十年もそのまま使うとは限りません。数年後に改装する。ブランドのデザインを変更する。傷んだ部分だけ補修する。テナントを退去する。こうしたこともあります。そのため床材を選ぶときには、将来どのように直せるかも考えておくと便利です。
たとえばタイル状の床材なら、条件によっては傷んだ部分だけを交換しやすい場合があります。一方、広い面積を一体的に仕上げる材料では、部分補修した場所が目立つこともあります。多店舗展開の場合は、使用する床材の品番を統一しておけば、改装や補修の際にも管理しやすくなります。ただし、床材は将来廃番になることもあるため、補修用として余った材料を保管しておく方法もあります。
床材の価格だけで減額しない
店舗内装工事の見積が予算を超えると、「床材をもっと安いものに変えよう」という話になることがあります。もちろん、床材の仕様変更は減額方法のひとつです。ただし、店舗全体で使う床は面積が大きいため、単価だけを見て選ぶと、営業開始後のメンテナンスで困る場合があります。
おすすめなのは、お客様からよく見える売場。バックヤード。水を使う場所。それぞれを分けて考えることです。店舗全体を高価な材料にする必要はありません。反対に、すべてを最低価格の材料にする必要もありません。予算をかける場所と抑える場所を分けることで、店舗の印象を保ちながらコストを調整できます。既存記事「店舗内装工事で予算オーバーしたら?」でも、仕上げ材は単純にグレードを落とすのではなく、使用する範囲を整理する方法を紹介しています。
床材はレイアウトが決まってから最終確定する
床のデザインを早い段階で考えることは問題ありません。ただし、最終的な材料や貼り分けは、レイアウトと一緒に確認することをおすすめします。カウンターの下はどうするか。造作什器の下まで仕上げるか。厨房との境目はどこか。バックヤードと売場をどこで切り替えるか。こうした部分はレイアウトによって変わります。
また、床の切り替え位置が中途半端だと、完成したときに不自然に見えることがあります。床だけの図面ではなく、什器や壁の位置を重ねて確認することが大切です。
まとめ
店舗内装の床材は、色や柄だけで選ばないことが大切です。確認したいのは、①人の通行量や使い方に合っているか、②毎日掃除しやすいか、③水を使う場所に適しているか、④広い面積に施工したときの見え方はどうか、⑤汚れや傷が目立ちすぎないか、⑥既存床や下地をそのまま利用できるか、⑦将来の補修・改装に対応しやすいか、という7つです。
店舗の床は、完成写真ではデザインの一部ですが、営業が始まれば毎日使う「設備」に近い部分でもあります。だからこそ、見た目・使いやすさ・メンテナンス・予算のバランスを考えて選ぶことをおすすめします。
カネケンでは、物販店・クリニック・美容室・買取店・飲食チェーン・オフィスなど、さまざまな店舗の新装・改装工事に対応しています。設計から施工までの一括対応だけでなく、設計事務所・デザイン会社様の図面から施工のみを行うことも可能です。「床材をどこまで変えるべきか」「既存の床をそのまま利用できるか」「予算に合わせて仕様を調整したい」といった計画段階でも、お気軽にご相談ください。概算のご相談は無料・即日目安でご回答します。