消防の確認は「工事が終わってから」では遅い
店舗工事では、壁や天井をつくり、照明や設備を取り付けてから消防署へ確認すればよいわけではありません。テナントの用途や間取りを変更すると、それまでの消防設備のままでは条件を満たさなくなる場合があります。
船橋市消防局でも、テナントの用途変更、間取りやレイアウト変更、増改築、窓や扉の工事、客席や従業員数の増加などによって、新たに自動火災報知設備などが必要になる場合があるとして、事前相談を案内しています。つまり消防については、「図面ができる→工事する→消防を確認する」ではなく、「計画する→消防条件を確認する→図面を固める→工事する」という順番で考えるほうが安全です。
① 前のテナントと同じ設備が使えるとは限らない
居抜き物件では、消火器、誘導灯、自動火災報知設備などが残っている場合があります。設備が残っていると、「前のお店が使えていたのだから、そのままで問題ないだろう」と思ってしまいがちです。しかし、前の店舗と新しい店舗で用途やレイアウトが変われば、必要な設備条件が変わる可能性があります。
たとえば事務所だった区画へ飲食店が入る場合と、同じ事務所がそのまま入れ替わる場合では、建物の使われ方が違います。また、同じ業種でも個室を増やしたり、壁の位置を変更したりすれば、消防設備の位置を見直す必要が出ることがあります。居抜き物件では、設備が「あるか」ではなく、新しい計画でも「使えるか」を確認してください。
② 間仕切りを増やすと消防設備にも影響することがある
店舗レイアウトでは、「ここを個室にしたい」「バックヤードを壁で区切りたい」「相談室をもう一部屋増やしたい」という変更がよくあります。ここで注意したいのが天井まで届く間仕切りです。壁を増やすことで部屋の区切り方が変わると、自動火災報知設備など既存設備の配置について確認が必要になる場合があります。
東京都では、対象となる防火対象物で、間取りや天井高さの変更、テナント入れ替え、客席や避難通路の変更などを伴う工事について、「防火対象物工事等計画届出書」の対象となる場合があります。東京消防庁は、該当する工事では原則として工事開始の7日前までの届出を案内しています。レイアウトを決めるときは、使いやすさだけでなく消防設備との関係も一緒に確認しましょう。
③ 避難経路を什器や客席で狭くしない
店舗では、できるだけ多く商品棚や客席を配置したいところです。しかし、レイアウトを詰め込みすぎると、避難するときの通路にも影響します。特に飲食店や物販店では、入口から奥まで商品棚を並べる、客席数を増やす、レジ待ちスペースを追加する、大型什器を設置する、といった変更で、人が通るルートが変わります。東京消防庁でも、対象となる飲食店などで客席レイアウトの変更によって避難経路が変わる場合を、工事等計画届出が必要となる例として挙げています。
店舗レイアウトの記事でもお伝えしていますが、図面を見るときは什器だけではなく「人がどこを歩くか」を線で確認することが大切です。通常営業時の動線だけでなく、非常時に出口まで移動できるかという視点でも見てみてください。
④ 工事前の届出が必要になる場合がある
消防関係の手続きで分かりにくいのが、「いつ届け出ればよいのか」という点です。工事が完成してから提出するものだけではありません。たとえば東京都では、対象となる店舗の修繕・模様替え・間取り変更などについて、工事開始の7日前までに「防火対象物工事等計画届出書」が必要となる場合があります。
さらに、消防設備そのものを新設・変更する場合には、工事内容に応じて消防設備士が行う着工届などが必要になる場合があります。東京消防庁では、対象となる「工事整備対象設備等着工届出書」について、工事着手の10日前までと案内しています。どの届出が必要になるかは物件や工事内容で異なるため、早めに施工会社・消防設備業者と確認してください。
⑤ 使用開始前の届出も忘れない
工事前の届出だけでなく、店舗を使い始める前に必要となる手続きもあります。たとえば東京消防庁では、建物やその一部を新しく使用する場合、「防火対象物使用開始届出書」を使用開始の7日前までに届け出るよう案内しています。テナント入れ替え後や改装工事後も対象例として示されています。
カネケンの拠点がある船橋市でも、テナント入居や増改築をする場合、防火対象物使用開始届出書を使用開始の7日前までに消防局予防課へ届け出ることとされています。ただし、必要な届出や手続きは自治体や建物条件によって異なります。実際の出店地を管轄する消防署へ確認することが確実です。
⑥ 消防設備の工事を内装工事と別に考えない
見積を比較するときにも注意してください。内装工事の見積に「消防設備工事」が含まれている場合と、別途になっている場合があります。たとえばレイアウト変更に伴って消防設備を移設する場合、その費用が内装工事費とは別に発生することがあります。商業施設では、消防設備が施設指定業者によるB工事になるケースもあります。
そのため、「内装工事800万円」という見積を見て「店舗工事は800万円で収まる」と判断するのではなく、消防・空調・電気など別途工事がないか確認してください。この考え方は店舗内装工事の見積書の見方やB工事・C工事とはの記事でも詳しく解説しています。
⑦ オープン日から逆算して消防確認の日程を取る
店舗工事では、「工事が終わった翌日にオープンする」という工程はおすすめしません。東京都では、防火対象物使用開始届出後、対象となる場合は使用開始前に消防署の検査を受ける必要があり、東京消防庁も届出時に検査日程を相談するよう案内しています。
消防関係以外にも、施設側の検査、什器・商品の搬入、レジや機器の設定、スタッフ研修、保健所関係の手続きなど、工事完成後に行うことがあります。そのため、工程表をつくるときは、オープン日→各種検査・届出→工事完成日という順番で逆算することが大切です。店舗内装工事の流れの記事でも、引き渡し日と開店日は同じではないことを解説しています。
消防署への相談は図面が固まる前がおすすめです
消防については、すべての条件を出店者自身で判断する必要はありません。大切なのは、「完成してから初めて確認する」状態を避けることです。物件が決まり、ある程度レイアウト案ができた段階で、必要に応じて管轄消防署へ相談します。
個室をつくる予定がある。飲食店へ用途を変更する。既存設備を移設する。客席数を増やす。こうした計画がある場合は、特に早めの確認がおすすめです。消防条件によってレイアウトを変更する必要があるなら、着工前のほうが圧倒的に調整しやすいためです。
まとめ
店舗内装工事では、消防関係の確認を工事完成後に回さないことが大切です。確認したいポイントは次の7つです。
- 居抜きでも既存消防設備をそのまま使えるとは限らない
- 間仕切り・個室の追加は消防設備にも影響する場合がある
- 客席や什器で避難経路を変えないか確認する
- 工事前に届出が必要となる場合がある
- 店舗使用開始前にも届出が必要となる場合がある
- 消防設備工事が見積に含まれているか確認する
- オープン日から逆算して届出・検査を進める
消防関係の要件は、業種、建物の規模、用途、既存設備、出店する地域などによって変わります。「前のテナントが営業できていたから大丈夫」と判断せず、新しい店舗の計画に合わせて確認してください。
カネケンでは、クリニック・買取店・美容室・物販店・飲食チェーン・オフィスなど、さまざまな店舗の内装工事に対応しています。物件図面やレイアウト案があれば、設備条件や工事区分を含めて出店計画の早い段階からご相談いただけます。「この物件で予定している店舗がつくれるか」「オープン日から逆算して工事を進めたい」といった段階でも、お気軽にご相談ください。概算のご相談は無料・即日目安でご回答します。