
まず知っておきたい「概算」と「本見積」の違い
店舗内装工事では、計画の早い段階で出す概算と、仕様が決まったあとに出す本見積があります。概算は、「この物件で、このくらいの店舗をつくると、おおよそいくらかかるか」を見るためのものです。物件を契約するか判断したり、出店予算を組んだりするときに使います。
一方、本見積では、図面・使用する材料・設備・工事範囲などを具体的にして、実際に施工する内容を積み上げていきます。そのため、まだ計画初期なら、「資料が全部そろってから相談しよう」と待つ必要はありません。今ある資料を施工会社へ送り、不足している情報を確認してもらうほうが早く進められることもあります。
① 物件の平面図
まずあると便利なのが、物件の平面図です。不動産会社からもらった募集図面でも構いません。分かれば、
- 店舗の広さ
- 間口
- 柱の位置
- 入口の位置
- トイレや水まわり
- 現在の間仕切り
などが記載された図面があると、施工会社も店舗の大きさを把握しやすくなります。CADデータまで用意できなくても、PDFや紙の図面をスキャンしたものでも構いません。特に概算では、まず何㎡・何坪の物件なのかが重要な情報になります。図面が手元にない場合は、不動産会社や管理会社へ確認してみてください。
② 現地の写真
図面と同じくらい役立つのが現地写真です。図面では分からない、天井。床。壁。分電盤。エアコン。厨房設備。給排水設備。既存の什器。などの状態を確認できます。居抜き物件なら、何が残っているかによって工事内容が大きく変わります。
写真を撮るときは、細かな部分だけではなく、入口から店内全体が分かるような写真もあると便利です。可能であれば、入口から奥。奥から入口。左右の壁。天井。設備まわり。というように複数方向から撮影してください。施工会社が現地調査へ行く前でも、物件の状態をある程度把握できます。
③ 希望するレイアウトや参考資料
次にあると分かりやすいのが、どのような店舗をつくりたいのかが分かる資料です。すでに設計会社やデザイン会社で図面を作成している場合は、その平面図や展開図を共有してください。まだ図面がない場合でも、受付をここに置きたい。個室を3室つくりたい。セット面を6席つくりたい。厨房はこのくらい必要。といった簡単なメモでも構いません。
参考にしている店舗の写真やイメージ画像があれば、それも施工会社に伝わりやすい資料になります。「おしゃれな感じで」という言葉だけより、具体的な写真やレイアウトがあるほうが、見積する工事内容を想定しやすくなります。
④ 設置する設備・機器の一覧
店舗内装の工事費は、設備によって大きく変わります。美容室ならシャンプー台。飲食店なら厨房機器。クリニックなら医療機器。物販店なら大型什器やショーケース。オフィスなら複合機やサーバー設備。こうした機器によって、必要な電源・給排水・空調などが変わるためです。
製品が決まっている場合は、メーカー名・型番・仕様書を共有してください。まだ決まっていない場合でも、「200Vの機器を使う予定」「シャンプー台を3台設置予定」という情報があるだけでも違います。特に電気・給排水を必要とする設備は、できるだけ早めに伝えておくことをおすすめします。
⑤ 希望する仕上げ・什器・サインの範囲
店舗内装工事の見積では、どこまで施工会社へ依頼するかによって金額が変わります。たとえば、床・壁・天井の内装だけ。造作カウンターまで。家具・什器まで。看板・サインまで。空調設備まで。というように依頼範囲は案件によって違います。
設計図に家具が描かれていても、「家具は別会社で発注する予定」というケースもあります。そのため見積依頼時には、「図面に描かれているものをすべて見積してください」のか、「内装工事だけお願いします」のかを伝えてください。材料が決まっている場合は、メーカー・品番も共有すると本見積の精度が上がります。
⑥ 商業施設・ビルの工事資料
ショッピングセンター、駅ビル、百貨店、オフィスビルなどの場合は、施設側の工事資料もあると助かります。工事区分表が用意されている場合があります。また、指定された材料や施工方法がある場合もあります。同じ20坪の店舗でも、路面店と商業施設では施工条件が違います。
施設から資料を受け取ったら、内容がよく分からなくても、そのまま一式施工会社へ共有するのがおすすめです。必要な部分を施工会社側で確認できます。
⑦ 希望するオープン日と予算
最後に忘れず伝えていただきたいのが、いつまでに、いくらくらいでつくりたいかです。予算を伝えると、「高く見積もられるのでは?」と心配されることがあります。ただ、店舗工事では予算が分かっていたほうが、最初から現実的な仕様を考えやすくなります。500万円の予算なのか、1,000万円なのかによって、提案できる内容は変わります。
また、オープン日が決まっているなら必ず伝えてください。店舗工事では、実際の施工期間だけでなく、図面作成。材料発注。施設承認。各種申請。什器搬入。開店準備。などにも時間が必要です。「○月1日オープン」と分かっていれば、そこから逆算して工程を検討できます。
資料がそろっていなくても、まず相談して大丈夫です
ここまで7つ紹介しましたが、「こんなに資料がない」と思われた方もいるかもしれません。すべてがそろっていなくても問題ありません。たとえば物件を検討している段階なら、物件の募集図面。現地写真。希望する業種。おおよその予算。希望するオープン時期。この程度でも、まず相談できる場合があります。
逆に、設計図が完成している場合は、図面一式をまとめて施工会社へ送ることで、より具体的な見積へ進めます。大切なのは、今ある情報と、まだ決まっていない情報を分けて伝えることです。決まっていないものを無理に決めてから相談する必要はありません。
相見積もりでは各社へ同じ資料を渡す
複数の施工会社へ見積を依頼する場合は、できるだけ同じ資料を渡してください。A社には最新図面。B社には古い図面。C社には設備資料なし。という状態では、見積金額を正しく比較できません。同じ図面。同じ仕上げ条件。同じ設備。同じ工事範囲。同じ希望工期。この条件をそろえて初めて、各社の見積を比較しやすくなります。
既存記事「店舗内装工事の見積書の見方」でもお伝えしているように、相見積もりでは総額ではなく、工事範囲をそろえることが重要です。
まとめ
店舗内装工事の見積を依頼するときに、あると進めやすい資料は次の7つです。
- 物件の平面図
- 現地の写真
- 希望するレイアウト・参考資料
- 設置する設備・機器の一覧
- 仕上げ・什器・サインなどの工事範囲
- 商業施設・ビルの工事資料
- 希望オープン日と予算
ただし、最初からすべてそろえる必要はありません。まだ物件を検討している段階なら、募集図面と写真からでも相談を始められます。店舗工事では、資料がそろうまで待つことよりも、早い段階で施工会社へ情報を共有し、何を確認すべきか整理することのほうが大切です。
カネケンでは、物件資料や図面をもとにした概算のご相談にも対応しており(回答までの日数は内容により異なります)、設計から施工までの一括対応だけでなく、設計事務所・デザイン会社様の図面から施工のみのご依頼にも対応しています。「まだ図面が完成していない」「物件を契約する前に概算だけ知りたい」「図面一式があるので施工見積をお願いしたい」といった段階でも、お気軽にご相談ください。