店舗の壁材で大切なのは、デザインだけではありません。お客様が触れやすい場所なのか、汚れやすい場所なのか、什器を取り付けるのか、数年後に改装する可能性があるのか。こうした使い方によって、向いている仕上げは変わります。この記事では、店舗内装の壁材を選ぶときに確認したい7つのポイントを、施工会社の視点で整理します。

店舗の壁仕上げにはどんな種類がある?
店舗でよく使われる壁仕上げには、クロス、塗装、化粧板、タイルなどがあります。クロスは色柄の選択肢が多く、比較的採用しやすい仕上げです。塗装は色を細かく指定しやすく、店舗らしい雰囲気をつくりやすい特徴があります。化粧板は木目や石目などのデザインがあり、傷や汚れに配慮したい場所にも使われます。タイルや石材系の仕上げは、入口やカウンターまわりなど、店舗の印象をつくるアクセントとして使われることがあります。
どれが一番優れているというものではありません。「どこに、何のために使うか」で選ぶことが大切です。
① 店舗全体を同じ壁材にする必要はありません
内装を統一したいと考えると、「すべて同じクロスで仕上げたい」「全面を木目にしたい」と思うことがあります。ただ、店舗の中では場所ごとに壁の使われ方が違います。入口正面は、お客様が最初に見る場所。商品棚の裏側は、什器でほとんど見えない場所。バックヤードは、スタッフしか使わない場所。すべてに同じ予算をかける必要はありません。
たとえば、お客様からよく見える壁だけデザイン性の高い仕上げにして、その他は一般的なクロスにする方法があります。店舗全体の印象を保ちながら、工事費を調整しやすくなります。既存記事「店舗内装工事で予算オーバーしたら?」でも、仕上げ材は単純にすべてのグレードを下げるのではなく、使う場所を絞る方法を紹介しています。
② 汚れやすい場所は「掃除できるか」で選ぶ
店舗の壁は、住宅以上に汚れやすい場所があります。入口まわり。レジ横。スタッフの通路。バックヤード。飲食店の厨房に近い場所。美容室の薬剤を扱う場所。こうした壁では、見た目だけでなく清掃しやすいかも確認したいところです。
たとえば、お客様や荷物が頻繁に触れる壁に、汚れが目立ちやすい仕上げを使うと、オープン直後はきれいでも数か月後に気になることがあります。「汚れにくい壁」を探すというより、どんな汚れが付く可能性があり、どのように掃除するのかを考えて選ぶと判断しやすくなります。特にスタッフ動線は、台車や荷物が壁へ当たることもあるため、売場とは違う仕上げを使う方法もあります。
③ アクセントウォールは「見える場所」に使う
店舗内装でよく使われるのがアクセントウォールです。一面だけ色を変えたり、タイルや木目の材料を使ったりして、店舗のポイントをつくります。ここで大切なのが、どの壁をアクセントにするかです。入口から入ったときに正面へ見える壁。受付カウンターの背面。ロゴサインを取り付ける壁。商品を見せたい壁面。こうした場所へ予算を集中すると、店舗全体を高価な材料で仕上げなくても印象をつくりやすくなります。
反対に、せっかくタイルを施工しても、大型什器を置いたらほとんど見えなくなったということもあります。壁材を決めるときは、壁だけの図面を見るのではなく、什器・家具・サインを置いた完成状態で確認することが大切です。
④ サインや棚を付ける壁は下地まで考える
壁には、仕上げ材を貼るだけではありません。店舗では、ロゴサイン。商品棚。ミラー。モニター。壁掛けテレビ。額縁。収納。などを取り付けることがあります。ここで注意したいのが、壁の下地です。完成した壁へあとから重量のあるものを取り付けようとしても、取り付けたい位置に適切な下地が入っていない場合があります。
そのため、「この壁にはサインを付ける」「ここには棚を取り付ける」と決まっている場所は、施工前に施工会社へ伝えてください。壁をつくる段階で下地を準備しておけば、完成後の追加工事を減らせます。店舗レイアウトと同じように、壁仕上げと取り付けるものを別々に考えないことがポイントです。
⑤ 小さなサンプルだけで色を決めない
クロスや塗装色を選ぶとき、カタログや小さなサンプルを見ることが多いと思います。ただ、小さな見本で見た色と、店舗の壁一面へ施工した色では印象が違う場合があります。周囲の床や天井。照明の色。自然光。什器の色。こうしたものによって見え方が変わるためです。
特に濃い色を広い面積へ使う場合は、想像以上に店舗が暗く感じることがあります。逆に、サンプルでは地味に見えた色でも、広い壁へ使うと十分存在感が出ることがあります。可能であれば、大きめのサンプルを確認し、床材や什器のサンプルと並べて見てください。照明計画が決まっている場合は、実際に近い光の下で確認すると完成後をイメージしやすくなります。
⑥ 防火上、自由に材料を選べない場合があります
店舗の壁材は、デザインだけで自由に決められるとは限りません。建物の用途・規模や場所などによっては建築基準法上の内装制限がかかり、壁や天井の仕上げに準不燃材料・難燃材料などが求められる場合があります。国土交通省も、一定の特殊建築物や一定規模以上の建物などについて、壁・天井の室内側の仕上げに内装制限があることを案内しています。
また、商業施設では法令とは別に、施設側の内装基準で使用できる材料が定められている場合があります。そのため、「この木材を全面に使いたい」「この材料を天井まで貼りたい」という希望がある場合は、発注前に施工会社や施設側へ確認してください。せっかく材料を選んでも、施工直前になって変更が必要になると、工期や予算にも影響します。
⑦ 将来の補修・改装も考えて選ぶ
店舗の壁は、数年後に補修や改装をする可能性があります。商品の入れ替えで棚を移動する。ブランドカラーを変更する。サインを付け替える。部分的に汚れたり傷んだりする。こうしたとき、直しやすい仕上げかどうかも確認しておくと安心です。
たとえばクロスなら張り替えやすい反面、同じ品番が将来廃番になっている可能性があります。塗装でも、時間が経つと既存部分との色差が出る場合があります。特殊なタイルや輸入材では、同じ材料をあとから入手しにくいこともあります。多店舗展開では、使用したメーカー・品番・色番号を一覧で管理しておくと、次店舗や補修工事でも仕様をそろえやすくなります。
壁材の見積は材料代だけでは決まりません
壁仕上げの費用を見るときは、材料の単価だけを比較しないことも大切です。既存の壁をそのまま利用できるのか。古いクロスを剥がす必要があるのか。下地補修が必要なのか。新しく壁をつくるのか。タイルを施工するための下地が必要なのか。同じ仕上げ材でも、施工する前の壁の状態によって工事費は変わります。
特に居抜き物件では、既存壁に穴や大きな凹凸があれば、仕上げ前に補修が必要になります。見積を見るときは、「壁材がいくらか」だけでなく「その壁をどのような状態にしてから仕上げるのか」まで確認してください。
まとめ
店舗内装の壁材選びでは、色やデザインだけではなく、実際の使い方を考えることが大切です。確認したいポイントは、①場所によって壁材を使い分ける、②汚れやすい場所は清掃性を見る、③アクセント材は見える場所へ使う、④サインや棚を取り付ける壁は下地を準備する、⑤大きな面積で見たときの色を確認する、⑥建物や施設の内装制限を確認する、⑦将来の補修や改装も考える、という7つです。
店舗の壁は面積が大きいため、材料の選び方ひとつでデザインにも工事費にも影響します。すべてを高価な材料にする必要はありません。お客様に見せたい場所、傷みやすい場所、スタッフしか使わない場所を分けて考えることで、デザインと予算のバランスを取りやすくなります。
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