また、看板はデザインだけで決められるものでもありません。建物への取り付け方法、電源、外壁の状態、商業施設のルール、屋外広告物に関する規制など、施工前に確認することがあります。この記事では、店舗の看板・サイン工事を計画するときに確認しておきたい7つのポイントを、施工会社の視点で整理します。
店舗サインは「店名を付ければ終わり」ではありません
店舗で使われるサインには、いくつか種類があります。入口上部のファサードサイン。建物から突き出す袖看板。窓ガラスへ貼るシートサイン。店内の壁へ設置するロゴサイン。自立式のスタンド看板。商業施設なら、通路側の店名サインや館内案内に表示するサインもあります。国土交通省の看板安全管理ガイドでも、壁面看板、袖看板、建植看板、置看板など、設置方法の異なるさまざまな看板が紹介されています。
大切なのは、すべての種類を設置することではありません。「どこから来るお客様に、どこで店舗へ気付いてもらいたいのか」から必要なサインを考えることです。
① まず「どこから店舗が見えるか」を確認する
看板を考えるときは、店舗の正面だけを見るのではなく、お客様が実際に近づいてくる方向を確認します。駅から歩いてくる人。道路を車で走ってくる人。ショッピングセンターの通路を歩いてくる人。同じ店舗でも、見る方向によって必要なサインは変わります。
たとえば店舗正面の壁面看板は、真正面からはよく見えても、歩道を横方向から歩いてくる人には見えにくい場合があります。そのような場所では、建物から突き出す袖看板のほうが見つけやすいこともあります。反対に商業施設では、遠くから大きく見せるより、店舗前まで来たお客様にブランドを認識してもらうサインが中心になることもあります。図面だけで決めず、できれば現地で、「お客様はどこから来るか」「何メートルくらい手前から店舗が見えるか」を確認してください。
② 店名より「何のお店か」を伝えたほうがよい場合もある
ブランド名が広く知られている店舗なら、ロゴだけでも業種が伝わります。しかし、新規ブランドや地域で初めて出店する店舗では、店名だけを大きく表示しても、「何のお店だろう?」と思われることがあります。たとえば、美容室。買取店。クリニック。カフェ。ショールーム。など、提供しているサービスが分かる情報をサインへ加えたほうがよいケースもあります。
もちろん、文字を詰め込みすぎると今度は読みにくくなります。看板は会社案内ではありません。店舗の前を通る短い時間の中で、店名と、必要であれば業種やサービスが伝わる程度に整理することがポイントです。
③ 昼だけでなく夜の見え方も確認する
昼間の現地調査だけで看板を決めると、夜になったときの見え方を見落とすことがあります。周辺が明るい繁華街なのか。店舗前が暗い道路なのか。商業施設内で常に照明があるのか。環境によって必要な照明も違います。看板そのものを内部から光らせる方法もあれば、外側から照らす方法もあります。
また、看板だけを明るくしても、入口が暗ければ入りにくく感じることがあります。店舗内装の照明と同じように、看板単体ではなく、入口・外壁・店内から漏れる光を含めて見ることが大切です。電飾看板を設置するなら、電源をどこから取るのかも着工前に確認しておきます。完成後に電源が必要だと分かると、せっかく仕上げた壁へ新たに配線することになる場合があります。
④ 看板の大きさは「大きいほど目立つ」ではない
店舗を目立たせたいと考えると、「できるだけ大きな看板を付けたい」と思うかもしれません。ただ、大きければ必ず見やすいとは限りません。店舗の間口に対して大きすぎる。文字が多すぎる。周辺の看板に埋もれている。見る場所に対して文字が細かすぎる。このような場合は、サイズを大きくしても伝わりにくくなります。
また、屋外看板は風や雨の影響を受けます。国土交通省のガイドでも、壁面看板は取り付ける外壁の種類や状態に合った施工方法が必要で、袖看板などは接合部にも負荷がかかるため、安全面を考えた設置・点検が重要とされています。デザイン上の大きさだけではなく、設置する場所・下地・固定方法まで含めて看板を考えることが重要です。
⑤ 屋外看板は自治体のルールを確認する
路面店などで屋外へ看板を設置するときは、屋外広告物に関するルールも確認が必要です。屋外広告物とは、一定期間継続して屋外で公衆に表示される看板・広告板などを指し、自分の敷地内に設置する看板でも該当する場合があります。許可が必要になる条件や設置できる大きさ・場所などは、自治体や地域によって異なります。たとえば千葉県でも、屋外広告物の表示・設置について許可申請の制度が設けられています。
そのため、「隣のお店にも同じような看板があるから大丈夫」と判断するのではなく、実際に設置する地域のルールを確認してください。高さや大きさによっては、屋外広告物以外の確認が必要になる場合もあります。屋外サインは、デザインを完全に決めて製作を始める前に、設置条件を確認しておくほうが安心です。
⑥ 商業施設ではサインにも指定があります
ショッピングセンター、駅ビル、百貨店などでは、屋外広告物とは別に施設独自のサインルールがあります。サインを設置できる範囲。文字の大きさ。照明方法。使用できる材料。店名ロゴを設置する位置。施工できる時間帯。などが指定されている場合があります。

そのため、デザイン会社でサイン案を完成させてから施設へ提出すると、「この大きさでは設置できません」「この位置は変更してください」となることがあります。修正だけならまだよいですが、すでに製作を始めていると作り直しが必要になることもあります。商業施設への出店では、内装の図面だけではなく、サイン計画も早い段階で施設へ確認することが大切です。B工事・C工事と同じように、誰が施工する部分なのかもあわせて確認してください。
⑦ 見積では「サイン一式」の範囲を確認する
店舗内装工事の見積を見ると、「サイン工事 一式」と書かれていることがあります。ここで確認したいのが、その一式に何が含まれているかです。デザイン。看板本体の製作。ロゴ文字の製作。シート貼り。照明。電気配線。取付工事。高所作業。既存看板の撤去。処分。申請関係。どこまで含まれているかによって金額は変わります。
また、店舗内装会社の見積には店内のサインだけが入り、建物外部の看板は別途という場合もあります。既存記事「店舗内装工事の見積書の見方」でもお伝えしているように、見積は総額だけでなく工事範囲を見ることが大切です。サインについても、どこに、何を、何個付ける見積なのかまで確認してください。
サインは内装工事と一緒に考えるほうが進めやすい
看板を最後に考えると、電源がない。取り付けたい位置に下地がない。外壁の仕上げと看板が合わない。施設への申請が間に合わない。といったことが起こる場合があります。逆に、内装設計の段階からサイン位置が決まっていれば、必要な電源や下地を先に準備できます。入口まわりの壁や照明とも合わせてデザインできるため、店舗全体としてまとまりやすくなります。
特にファサードは、外壁。入口。ガラス面。照明。サイン。を別々に考えるのではなく、一つの店舗の「顔」として計画することをおすすめします。
既存看板を利用するときも状態を確認する
居抜き物件では、前のテナントが使用していた看板枠や袖看板が残っていることがあります。表示面だけを交換できれば、新しく一から製作するより費用を抑えられる場合があります。
ただし、既存看板なら何でも再利用できるわけではありません。長期間屋外に設置されている看板では、内部の鉄骨や取付金具に腐食などが生じている可能性があります。国土交通省のガイドでも、看板は雨・風・日差しによって腐食、ゆるみ、亀裂などが生じるため、日常点検や専門業者による点検が重要とされています。「枠があるから安く済む」と決める前に、再利用できる状態か確認してください。
まとめ
店舗の看板・サイン工事では、デザインだけでなく「どこからどう見えるか」と施工条件を一緒に考えることが大切です。確認したいポイントは次の7つです。
- お客様がどの方向から店舗を見るか確認する
- 店名だけでなく何のお店か伝わるか考える
- 昼と夜の見え方を確認する
- 大きさだけでなく下地・固定方法まで考える
- 屋外看板は自治体のルールを確認する
- 商業施設では施設独自のサイン基準を確認する
- 見積の「サイン工事一式」に含まれる範囲を見る
看板は、内装工事が終わったあとに追加する飾りではありません。お客様に店舗を見つけてもらい、入口まで案内するための大切な店舗設備のひとつです。だからこそ、物件・レイアウト・内装・照明と一緒に、早い段階から計画することをおすすめします。
カネケンでは、店舗の設計・内装工事をはじめ、商環境事業としてサイン・看板工事にも対応しています。路面店・商業施設内の店舗のどちらにも対応しているため、内装とあわせた店舗全体の施工についてご相談いただけます。「看板まで含めて店舗工事をまとめて相談したい」「商業施設からサインの施工基準を渡された」「既存看板を利用できるか確認したい」といった計画段階でも、お気軽にご相談ください。