
① まず「標準仕様」を決める
多店舗展開で最初に整理したいのが、店舗の標準仕様です。たとえば、
- 床材
- 壁クロス
- 塗装色
- 照明器具
- 建具
- カウンター
- 什器
- サイン
- コンセント
などです。店舗ごとに毎回ゼロから選んでいると、打ち合わせに時間がかかるだけでなく、完成した店舗にも少しずつ違いが出てきます。そこで、「床はこのメーカーのこの品番」「壁は基本的にこのクロス」「受付カウンターはこの寸法」というように基準を決めておきます。
標準仕様があれば、施工会社も見積・発注・施工を進めやすくなります。ただし、すべてを固定する必要はありません。ブランドとして統一したい部分だけを標準化することがポイントです。床材や壁材、照明の選び方は、それぞれの記事でも整理しています。
② 図面も「毎回つくり直す」のではなく基準を持つ
仕上げ材と同じように、図面にも基本となる考え方を持っておくと便利です。たとえば、
- 入口付近に受付
- その後ろにバックヤード
- レジカウンターはこの寸法
- 商品棚はこのモジュール
- 個室は最低この大きさ
というような基本レイアウトです。もちろん物件の形は毎回違います。細長い店舗、正方形に近い店舗、柱が多い店舗、入口が2か所ある店舗など条件はさまざまです。
そのため標準レイアウトをそのまま当てはめるのではなく、基本となる店舗モデルを、物件条件に合わせて調整するという考え方が向いています。毎回ゼロから考えるより、ブランドイメージと店舗運営の両方をそろえやすくなります。動線やバックヤードの考え方は「店舗レイアウトの考え方」でも整理しています。
③ 物件ごとの設備条件は必ず確認する
内装仕様を標準化しても、設備条件まで同じとは限りません。同じ20坪の店舗でも、
- 電気容量
- 給排水位置
- 空調設備
- 換気設備
- 天井高さ
- 既存設備
によって工事内容は変わります。特に居抜き物件では、以前の店舗が何を使用していたかによって残っている設備も違います。「前回の店舗が500万円だったから、次も500万円」とは限りません。
多店舗展開では、標準仕様があるからこそ、逆に物件ごとの差分を早く見つけることが重要です。候補物件の資料や写真を施工会社へ共有し、「標準店舗をこの物件につくる場合、どこが変わりそうか」を契約前に確認すると、出店予算も立てやすくなります。契約前に見ておきたい項目は「店舗物件の契約前に確認したい設備条件」にまとめています。
④ 見積は同じ項目で比較できる形にする
店舗数が増えてくると、本部では各店舗の工事費を比較する場面が増えます。A店は700万円、B店は850万円、C店は780万円。この数字だけを見ると、「なぜB店だけ高いのか」という疑問が出ます。
そこで重要なのが、見積項目をある程度そろえることです。
- 仮設工事
- 解体工事
- 軽鉄・ボード工事
- 仕上げ工事
- 電気工事
- 空調工事
- 給排水工事
- サイン工事
- 什器工事
など、毎回同じような区分で見積を整理しておけば、店舗ごとの差を確認しやすくなります。たとえば、「B店は内装が高いのではなく、空調新設が150万円入っている」と分かれば、金額差の理由も説明しやすくなります。
多店舗展開では、工事費を安くすることだけでなく、金額差の理由を把握できる状態にすることが大切です。見積書のどこを見るかは「店舗内装工事の見積書の見方」、依頼時に渡す資料は「見積依頼に必要な資料」で整理しています。
⑤ 商業施設ごとのルールは「例外」として管理する
同じブランドでも、路面店と商業施設内の店舗では工事条件が違います。商業施設では、
- 工事区分
- 内装設計基準
- サイン基準
- 搬入時間
- 作業時間
- 入館手続き
- 指定業者
など施設ごとのルールがあります。そのため、標準仕様が決まっていても、「この施設ではこの照明が使えない」「空調工事はB工事になる」「サインの大きさを変更する必要がある」ということがあります。工事区分については「B工事・C工事とは」で解説しています。
ここで大切なのは、標準仕様を崩してしまうのではなく、標準から変更する部分だけを整理することです。「基本仕様+施設ごとの差分」という形にしておくと、本部・設計会社・施工会社の間でも変更点を共有しやすくなります。
⑥ 複数店舗のオープンが重なるときは工程をまとめて管理する
多店舗展開では、10月に東京店、11月に埼玉店、12月に千葉店というように、短期間で複数店舗を出店することがあります。この場合、1店舗ずつ順番に考えていると、本部側の確認作業が追いつかなくなることがあります。
各店舗について、
- 物件契約
- 現地調査
- 図面確定
- 見積確定
- 材料発注
- 施設承認
- 着工
- 引き渡し
- オープン
までの予定を一覧にしておくと進捗を確認しやすくなります。特に注意したいのが、店舗ごとに工事期間だけを見ることです。実際には着工前に、図面確認や材料発注、商業施設への申請などの時間が必要です。
オープン日から逆算して、複数店舗を並行して管理することが、多店舗展開では重要になります。1店舗あたりの期間の目安は「店舗内装工事の流れ」をご覧ください。
⑦ 竣工後の変更を次の店舗へ反映する
多店舗展開では、1店舗目で完成した仕様が必ずしも最終形とは限りません。実際に営業してみると、「レジ横にコンセントを追加したい」「バックヤードの棚をもう少し増やしたい」「この床材は汚れが目立つ」「照明を少し明るくしたい」といった改善点が出てくることがあります。
ここで、その店舗だけを直して終わりにすると、次の店舗でも同じ問題が起こります。改善した内容は、
- 標準図
- 仕上げ表
- 設備仕様
- 什器図
などへ反映し、次の出店に活かしていくことが大切です。多店舗展開では、店舗を増やすたびに同じものをつくるのではなく、出店するたびに標準仕様を少しずつ改善していくと、店舗づくりの精度が上がっていきます。電源や通信配線のように後から足しにくい設備は、この反映がとくに効いてきます(「店舗のLAN・Wi-Fi工事で失敗しない7つのポイント」)。
同じ施工会社へ継続して依頼するメリット
複数店舗を出店するとき、毎回違う施工会社へ相見積もりを取る方法もあります。一方で、同じ施工会社へ継続して依頼すると、
- ブランドの仕様を理解している
- 過去店舗の図面を把握している
- 本部との確認方法が決まっている
- 注意する部分が共有されている
という状態をつくりやすくなります。もちろん、継続して依頼するだけで工事がうまくいくわけではありません。大切なのは、施工会社側でも、「前回と同じだから」で進めるのではなく、物件ごとの差分をきちんと確認することです。
標準仕様を理解しながら、現場ごとの条件へ対応できる施工会社であれば、多店舗展開も進めやすくなります。会社を選ぶときの視点は「店舗内装工事の施工会社の選び方」で整理しています。
改装・原状回復まで含めて考える
店舗数が増えると、新規出店だけではなく、
- 既存店の改装
- 什器の入れ替え
- 設備更新
- 閉店時の原状回復
も同時に発生するようになります。そのため、多店舗展開の施工体制を考えるときは、「新しい店舗をつくれる会社」だけではなく、出店後の改装やメンテナンスまで対応できるかという視点も重要です。
店舗ごとに別々の会社へ依頼するより、過去の図面や仕様を把握している会社へ相談できるほうが、改装時の確認も進めやすくなります。営業を続けながらの改装は「営業しながらの改装」、退去時の範囲は「原状回復の基本」をご覧ください。
まとめ
多店舗展開の店舗内装工事では、単店舗の工事とは少し違った管理が必要です。確認したいポイントは次の7つです。
- ブランドとして統一する標準仕様を決める
- 基本となるレイアウト・図面を用意する
- 物件ごとの設備条件を確認する
- 見積項目をそろえて店舗ごとの差を把握する
- 商業施設ごとのルールを差分として管理する
- 複数店舗の工程をまとめて管理する
- 竣工後の改善内容を次店舗へ反映する
多店舗展開では、すべての店舗を完全に同じにつくることが目的ではありません。ブランドとして変えない部分と、物件条件に合わせて変える部分を明確にすることが重要です。
カネケンでは、首都圏に本社を置く企業様の全国出店・多店舗展開に対応し、新装工事だけでなく、既存店の改装・リニューアル、部分改修、原状回復まで対応しています。「全国の店舗工事をまとめて依頼したい」「店舗ごとの仕様のばらつきを減らしたい」「今後の出店に向けて標準仕様を整理したい」といった計画段階でも、お気軽にご相談ください。